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糖尿病の診断薬の開発
基本的に糖尿病の診断は血糖値を測定することで糖尿病の有無を判断します。しかしながら、「糖尿病であろう」という診断しか方法がなく、現在糖尿病かどうかを確実に検査する方法はありませんでした。しかし、我々は糖尿病幹細胞の発見により、糖尿病末梢血での糖尿病幹細胞の有無により、糖尿病かどうかを診断するコンパニオン診断薬の開発が可能となりました。
糖尿病の「消せない記憶」
糖尿病マウスの研究において、プロインスリンとTNF-αを産生する異常細胞が様々な臓器で発見されました。これらの異常細胞は骨髄由来であり、肝臓のクッパー細胞や星細胞、腸管のICCカハール、脳のミクログリア、骨の破骨細胞、脂肪細胞、組織のマクロファージ、腎臓の血管内皮細胞などに見られました。
調査の結果、これらの異常細胞は短期造血幹細胞の中のCD106陽性細胞から生じていることが判明しました。この幹細胞の異常が全身の臓器に不具合を引き起こしており、本来は傷ついた組織を再生させる役割を持っているこれらの細胞が糖尿病によってその機能を失っています。
この現象を「糖尿病幹細胞」と名付け、この細胞が糖尿病の「消せない記憶」として体内に残り続け、病気を悪化させていると考えられます。幹細胞の異常により、高血糖状態が続くたびに異常な幹細胞が増加し、血管障害や臓器の機能不全が進行してしまうのです。
我々の体には、神経系、免疫系、内分泌系という三つのホメオスタシス維持機構が存在しますが、さらに長期造血幹細胞を頂点とする再生系という第4のホメオスタシスがあると考えられます。この再生系が糖尿病により障害を受けることで、糖尿病は「不治の病」となります。
実験的に作成した糖尿病性神経障害のモデルでは、高血糖のトリガーを取り除き、糖尿病幹細胞(病的なCD106陽性の造血幹細胞)を除去することで治癒が可能であることが確認されました。つまり、この糖尿病幹細胞が存在する限り、糖尿病は続くということです。
この知見を基に、糖尿病幹細胞の早期発見と除去を目指した診断薬の開発が進められています。新たな診断薬の登場は、糖尿病の根本的な治療につながる可能性があり、多くの患者にとって希望の光となるでしょう。